toco's オトノワ コトノハ

歌うたいtocoの音の輪・言の葉エッセイ。テーマは、音楽。
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イタチのきもち Vol. 10 最終回

2009.05.03
ななは、動物病院の先生から間もなく亡くなるだろうと診断された後、3日を生き延びた。奇跡的だと言われた。

nana_turn_around2
元気なとき、ななは健康診断でずっとお世話になっていた動物病院の先生たちに、なかなか慣れなかった。けれど、最後には『助けてくれる人だ』となななりに理解したようだった。入院中に点滴のカテーテルをつけられたときも、最初は嫌がったけれど、最後は無理に外そうとはしなかった。「点滴をはずそうとする子も多いんですよ。ななちゃんは、これで楽になっているって、ちゃんと分かってるんですね」と先生が言った。

自分の力で歩くことが難しくなっても、目覚めると散歩に行きたがる。なながどこに行きたいのか、わたしと夫には、顔や視線の動きでなんとなく分かった。廊下へ、そして大好きなお風呂場へ。ななの歩く高さにそっと抱き上げて、一緒に散歩コースを周り、においをかいで回ると気がすむようだった。

最後には水も食事も自分で摂ることができなくなり、シリンジを使って与えた。「フェレット持ち」で水を飲ませる方法を、動物病院で教わった。けれど、ななは何をしてもらえるのかすぐに理解したようで、この方法で水を与えようとした2回目からは、わたしがシリンジを構えると、じっとわたしの目を見て、自分から進んで顎を上げた。丁度「フェレット持ち」の角度に顎を上げるので、優しく抱いたまま、まるで人間の子供にミルクを与えるような姿勢で水を飲ませることができた。『お水くれるんでしょ?頑張るね』と言っているようだった。ほんとうに辛いとき、動物はこんなにも飼い主を信用するんだと思うと、胸が熱くなった。

何かあったらいつでも対応してくださるという動物病院の先生のお言葉に甘え、休日や深夜にも世話になった。そんな中で、打てる手はどんどん少なくなっていった。

いよいよ危ないと思われた最初の夜から、ななの呼吸は何度も止まりそうになり、そのたびに、何かに酷く怯えていた。わたしたちは、意識が遠のくななの名前を呼び続けた。するとななの意識は、まるでなんとかここに留まりたいというように、何度も戻ってきた。わたしたちが眠っている間に、ななが一人寂しく逝かないように、家族で片時も離れず見守った。ななが目を覚ましたときは、いつでもそばにいてあげたかった。わたしと夫は、徹夜の日が続いた。

「なな、なな」
しばらく静かな時間が流れ、ななはずっと動かなかった。もう、はっきりとした意識はないのかも知れない。そう思いながら優しく撫でていると、突然バタバタバタバタッ!と勢いよく尻尾を振る一瞬があった。まるでその時だけ、元気な体に戻ったようだった。ななは、嬉しいときによく尻尾を振っていた。ああ。ずっと側にいると、わかっているね。撫でられて、きっと嬉しいんだね。

見守りながら、一緒に朝を迎えるたびに奇跡だと思った。こうしてゆっくりとお別れをしながら3度目の夕陽が落ちたとき、ななは穏やかに、微笑むように、まるでもう気が済んだというように、最期にふっと力がぬけて、眠るように逝ってしまった。

ななを抱いて、昼も夜も動物病院に通った、2007年のゴールデンウィークの日々。ななを病院にあずけて点滴が終わるのを待った、病院近くの広大な広場。そこでは元気溢れる子供たちが、にわかに夏めいた日差しの中、歓声をあげて遊んでいた。新緑の反射がそう見せるのか、元気な子供たちのせいなのか、広場全体がキラキラと輝いて見える、不思議な光景だった。目の前に広がる幸せの景色が、わたしと夫には、気の遠くなる程遠い世界のように感じられた。

あんな風に輝いて見えるのは、子供たちの命が輝いているせいかも知れない。ふと、そんなことを思った。ななの命が今にも消えそうな時に、すぐそばにこんなに輝く命があるということが、不思議でならなかった。だけどよく考えたら、ななにだって、キラキラと輝いていた時期があったんだ。

人知れず消えていく命があって、そのすぐそばには沢山の輝く命がある。きっとこんなことの繰り返しで、世界は静かに移り変わっていくのだろう。消えていく命があると知っているから、元気に生きている姿が、輝いて見えるのかも知れない。ななは、わたしたちに大切なことを教えてくれた。

「ななちゃんには、十分気持ちが伝わったと思いますよ」
と先生が言った。休日も、深夜も、最後まで最善の処置をしてくださった先生、そしてダクタリ動物病院の皆様、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

動物には複雑な言葉が分からない。だから、わたしたちと触れ合うことで、いつも何かを感じている。ななは、愛された記憶を、ちゃんと宝物として持っていけただろうか?

亡くなった後も、しばらく身近に感じていたななの気配が、時がたつにつれて、家の中でどんどん薄くなっていく。だけど心の中に、懐かしい思い出として、ななの場所がしっかりとできていく。

ありがとうと、もう何度言ったか分からない。なながうちに来てくれて、わたしたちはとても幸せだったよ。ありがとうね、ななりん。

なな
2002年10月10日 ~ 2007年5月3日

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※Newカテゴリー「イタチのきもち」は、期間限定のエッセイです。ご愛読ありがとうございました。

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Comment

Re: こんにちは - toco

フェレッ党首 美琴さま、ご訪問ありがとうございます♪

一人っ子だとより人間に近くなる、って確かにそうかも知れませんね!フェレットはもともと賢いので、こっちもだんだん、相手が人間であるような錯覚をしていきますし。

当初の計画では、ほんの3~4回の短いエッセイのつもりした。予告編公開時にはすでにドラフトができていたのですが「もっとたくさん書いて!」という家族の熱いラブコールに応え、連載開始まで、とても時間がかかってしまいまいた。結果的にたくさんの方に読んでいただけたので、ほっとしています。

ななのお話は「期間限定」なので続編予定はありませんが、すでにアップしている分は、せっかくなので、このまましばらくお楽しみ頂こうと思います。また読んでみたいな~と思っていただけたら、是非また遊びにきてください!ピトちゃんたちと、どうかすえ長くお幸せに!
2009.05.10 Sun 19:20 URL [ Edit ]

こんにちは - 美琴

お久しぶりです

最終回まで全部読まさせていただきました
このままエッセイとして出版しちゃってもいいのでは?と思うくらい、読みやすい文章で、ななちゃんの姿が目に浮かぶようでした
年月が経ってもtocoさんの中で鮮明にななちゃんが生き続けてるんだろうなあと感じました

ななちゃん、ほんとに賢い
シャンプー嫌いなのに風呂場が大好きなのはうちのムスメと一緒です(笑)

いたちさんって、一人っ子だとより人間に近くなるんじゃないかと思ってます
そもそも本人は自分は人間だと思ってるんでしょうけどネ

あと、ななちゃんの生きた証、期間限定とは言わずにこのまま残しておいてほしいなあと思いました

ではでは
2009.05.08 Fri 15:28 URL [ Edit ]

楽しいフェレットライフが続きますように - toco

> ゆっけさん

こんにちは!
思い出がたくさんあると辛いこともあるけど、思い出がくれる幸せのほうがずっとずっと、大きいですね。ゆっけさんのところは、これからたくさん、たーくさん、面白エピソードが増えていきますね。二人のフェレちゃんと一緒の生活、楽しんでください!

フェレットの愛らしい姿が見たいときに、またおじゃましますね。


> ぷりまめままさん

こんにちは。ご訪問ありがとうございます!
楽しいさかりのフェレット生活をお過ごしのことと思います。

ファーム出身のフェレットは、生後間もなく避妊などの手術をするため、ホルモンバランスが狂いやすく、犬や猫に比べて病気になりやすいそうです。わたしはあんなに一緒にいたのに、いつもより元気のない様子をいち早く気づいてあげられませんでした。小さな動物は、飼い主さんが異変に「気が付く」スピードが鍵なので、たくさん見守ってあげてくださいね!

♪みなさんの楽しいフェレライフが、いつまでも続きますように♪

* 追伸 *

下のコメントにも書かせていただきましたが、どなたでも気軽に試聴できるサイトが用意できたら、曲などアップしたいと思います! ちょっっと先になりますが、また、遊びにきてくださいネ。
2009.05.07 Thu 19:35 URL [ Edit ]

Re: 今日は - toco

Re: 今日は - toco

> ちょこくまさん、こんにちは。

最終回まで読んでくださって、ありがとうございます。

天国にいった子たちはどうしているんだろうって、とりとめもなく、考えることがあります。ちょこくまさんの言うとおり、みんなで幸せにしているのかも。そしてそのうちまた、どこかで巡り合えるのかも・・・。特別な信仰を持たないわたしですが、命の不思議について、たくさん考えました。

可愛いがられた子はみんな、ココロの中の "宝物置き場" に、愛された記憶を持っているのかな。だといいな。

>音楽活動これからも頑張ってくださいね。

ありがとうございます。ななの最期の頃に作っていた曲があるので、どなたでも気軽に試聴できるサイトが用意できたら、アップしたいと思います!
2009.05.07 Thu 17:38 URL [ Edit ]

こんばんは - ぷりまめまま

ななちゃんのお話、読ませていただきました。

ななちゃんは本当に賢いフェレットちゃんだったのですね・・・
こんなに愛されて、きっと幸せだったろうと思います。
私とフェレットたちとの生活は、まだ始まったばかりですので、
ななちゃんに負けないように楽しくすごしたいと思います。

音楽活動、がんばってくださいね!
2009.05.05 Tue 01:24 URL [ Edit ]

- ゆっけ

毎回読ませてもらってました。

ななちゃん、とても幸せだったと思います。

自分も今二人のフェレと共に生活していますが

tocoさんやななちゃんのように思い出いっぱい作って

最後の最後まで幸せでいっぱいにしてやりたいと思います!

音楽活動頑張ってください!では失礼しました。
2009.05.05 Tue 00:20 URL [ Edit ]

今日は - ちょこくま

こんばんは。今日は、ななちゃんの命日だったの
ですね。期間限定のななちゃんのお話読みました。

最後まで頑張ったんですね。今頃きっと天国で
たくさんのフェレさん達と遊んでいますよ。昨年、
12月に亡くなった我が家のくま太郎も一緒です。

家の場合は若かったので病気の進行が早かった
です。今でも思い出すと涙がとまりません。

ななちゃん、きっと「ありがとう」って言っていると
思います。

音楽活動これからも頑張ってくださいね。
2009.05.03 Sun 22:22 URL [ Edit ]

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